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相談事例73: 『みなし弁済』の無効と過払い金


 10年前、生活費が足りずに消費者金融から借金した。その後ずっと返済しているのに減らない。逆に増えているように思う。現在2社に100万円の借金があるがどうしたらよいか。

(50歳代 女性)


 返済が長期にわたっており、平成18年1月13日付けの最高裁判決が「みなし弁済」(貸金業規制法43条)に対して厳しい判断を下していることから、過払い金が発生していることが推定されましたので、専門家(司法書士、弁護士)に相談するように伝えました。


 消費者は、これまで、消費者金融から借金した場合、グレーゾーン金利(利息制限法の上限を超えるが、出資法上の上限金利を上回らないため刑事罰に問われない金利)に基づいて利息を支払うのが当然とされてきました。このグレーゾーン金利の存在を庶民金融の観点から政策的に支えてきたのが、「みなし弁済」と呼ばれる貸金業規制法43条1項の規定です。
 本条の特徴は、利息制限法の上限(借入額によって15%〜20%までの幅がある)を超える金利について、その超える部分の金利を無効と認めたうえで(利息制限法1条1項)、その無効の金利にかかる無効の超過利息の支払いを、一定の要件の下に有効な支払いであるとみなしているところにあります。
 ここで、「一定の要件」というのは、1)貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の利息の契約に基づき、2)債務者が超過利息を任意に支払い、3)その際、書面等の交付がなされていること、というものです。
 ところが、平成18年1月13日、最高裁判所は、「1)事実上強制を受けて支払をした場合は自由な意思によって支払ったとは言えず、期限の利益喪失特約は制限超過部分につき無効だが、債務者に有効であるとの誤解を与え支払を事実上強制することになるから、特段の事情のない限り任意に支払ったとはいえない、2)貸金業法18条の記載事項を契約番号で代替する同法施行規則15条2項は法の委任を逸脱し無効であり、契約番号のみで契約年月日の記載を欠く受取証書は18条書面といえない」と判示しました。
 つまり、消費者は、貸金業者との間に締結した金銭消費貸借契約のうち、「分割返済の期日までに利息を支払わなければ、直ちに一括返済を求める」との期限の利益喪失特約が付けられている契約(ほぼ100%この特約が付けられている)については、「任意に支払った」という要件を欠くことになりますから、「みなし弁済規定」が適用されず、契約締結時に遡って利息制限法に基づく利息を支払えばよいことになります。そのことは、受取証書についても「18条書面には当たらない」と判示していますから、同じ結論が導き出されることになります。ということは、これまでグレーゾーン金利で利息を支払ってきた消費者は、すべて利息を払いすぎていることになりますから、過払金があるかどうかはともかく、一度、利息制限法の金利に引き直してこれまで支払ってきた利息額を再計算してみる価値はあります。支払期間が短かければ、過払い金はないかもしれませんが、少なくとも、元本が減少する可能性が出てきます。
 借金がどのくらい減るかという一応の目安としては、「サラ金・消費者金融からお金を取り返す方法(過払い金回収マニュアル)」(名古屋消費者信用問題研究会 代表=弁護士・瀧康暢[編著]・発行所ダイヤモンド社)によれば「50万円借り入れたとすると、4年で半額、7年でゼロ円。10年なら50万円近く戻ってくる」と説明されています(同書16ページ)。
 そして、平成19年2月13日、最高裁判所は新たに、「1)同じ貸主でも個別に契約した場合、一つの借金で生じた過払い金は原則として別の借金返済には充当できない、2)過払い返還金にかかる利息は民法所定の年5%」と判示しました。
 結局、消費者は利息制限法に基づいて再計算し、過払い金が出る場合には、貸金業者から年率5%の金利を付けて返金してもらえることになったのです。
 なお、平成18年12月、貸金業規制法が改正され、出資法の上限金利(29.2%)が、平成21年末をめどに利息制限法の上限と同水準の年20%にまで引き下げられ、みなし弁済制度も公布後1年以内に廃止されることになりました。
 これまで庶民金融の政策的要とされ、その一方で、多重債務に陥る大きな要因の一つとされてきた「みなし弁済制度」が遂に姿を消します。

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