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相談事例集
 

相談事例58: 敷金契約に潜むもの


 6ヶ月入居したアパートを退去したが、申し出が遅かったとして半月分の家賃を請求され、敷金から差し引くと言われた。そのうえさらに、畳、襖替え、清掃費、鍵交換など合計125,000円を請求された。敷金は3ヶ月分129,000円預けていた。返金して欲しい。


 受け付けた市役所を通して敷金の返金要求通知書を送付するように伝えました。1ヶ月後、相談者が敷金の返金を求めて少額訴訟を提起したところ、賃貸人から「消費者契約法の不当条項無効の主張は、貸し家業界全体に影響をもたらす重大事であり認めることはできない。退去通知も受けていない」等の答弁がなされましたが、裁判官が和解を勧め、10万円が返金されることになりました。


 「賃貸マンションで普通に暮らしていて生じた床や壁の汚れを借り手の責任として、修繕費やクリーニング代を敷金から差し引けるか」で争われた裁判で、最高裁第二小法廷は平成17年12月16日、「修繕費などは本来賃料に含まれる」と判示し、最高裁としては初めて貸手負担の原則を確認しました。
 敷金というのは、賃借人が賃料の支払その他賃貸借契約上の債務を担保とする目的で賃貸人に交付する金銭のことです(民法316条、619条)。
 住居の価値は、居住の有無にかかわらず時間の経過により減少しますし(経年劣化)、契約により定められた通常の使用方法に従って使用していても価値は減じます(通常損耗)。したがって、賃借人は、住居が使用開始当時の状態よりも悪くなっていたとしても、そのままの状態で住居を賃貸人に返還すればよいというのが原則的な考え方です。
 この考え方に沿って、国土交通省が策定したガイドライン(強制力はありません)では、「原状回復」の意義を、賃借人が借りた当時の状態に戻すということではなく、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
 この定義に沿って、国土交通省が平成16年2月10日、地方自治体や関係団体に示した「原状回復」の例では、賃貸人が負担すべきものとして、

1. 専門業者による全体のハウスクリーニング
2. 破損していない畳の裏返しや表替え
3. 家具による床などのへこみ
4. テレビや冷蔵庫後部の黒ずみ
5. 日照による畳やクロスの変色
6. 破損や紛失していないカギの取り換え
7. エアコンの設置の壁のビス穴

などを挙げています。
 一方、賃借人が負担すべきものとして、

1. 引っ越し作業でできたキズ
2. 冷蔵庫下の床のサビ跡
3. ペットによる柱の傷
4. 清掃を怠った風呂、トイレ、洗面台の水アカ、カビ
5. 不適切な手入れや用法違反による設備の破損
6. 飲み物をこぼして放置したためできたカーペットのシミ、カビ

などを挙げています。
 このことからも、賃借人は、できれば家主に立ち会ってもらい、入居前及び退去時の状態を写真に撮り、記録として保存しておくことをお勧めします。
 良質の住居を確保することは、健全な社会生活を送るための必要最低限の条件です。
 しかし、これまで、居住用不動産の賃貸借契約については、生活基盤を確保する重要な契約であるにもかかわらず、貸す側と借りる側との力の差を反映した内容がルールとして定着してきたという歴史があります。
 社会生活においては、権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならないというのが原則ですから(民法1条2項)、敷金返還交渉の場合も、「原状回復とはどういうことか」ということを双方が理解したうえで、信義則の原則に沿って交渉を進めることになります。

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