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相談事例39: 商品先物取引


 2ヶ月前、訪問販売で「ガソリン」と「灯油」の商品先物を契約した。2週間前決済を申し出たが、決済日当日になって新規に「銀」、「金」、「大豆」、「アルミニウム」、「白金」と矢継ぎ早に取引を広げられていた(この新規取引にかかる手数料179万円、帳尻損243万円)契約時、「ガソリンは値上げ幅が大きく絶対利益が出ると説明されたが、儲かるどころか345万円の損失を被った。説明が虚偽だったので損金を返して欲しい。

(20歳代 男性)


 消費者契約法4条1項1号(重要事項の不実告知)、同2号(断定的判断の提供)及び同法4条2項(不利益事実の故意の不告知)に基づく取消し、並びに民法95条(要素の錯誤)に基づく無効を書面で申し出るように助言しました。申し出後、事業者から手数料302万円のうち100万円を返金するという提示があり、相談者が納得したため合意和解ということで終了しました。


 商品先物取引(ここでは国内公設先物取引に絞ります)の危険性についてはこれまでもよく指摘されてきました。ただ、変幻極まりない相場の世界で、「事業者が構造的な詐欺行為(客殺し)を行うことは可能か」ということについては、これまで刑事事件ではともかく、民事事件で明確に肯定されたことはなかったようです。しかし、「それは可能である」と断定した画期的な裁判例が登場しました(神戸地方裁判所姫路支部平成14年2月25日判決。大阪高裁平成15年 12月2日確定)。
 上記判決はその要件として、 1)「向かい玉」、 2)「利乗せ満玉」、 3)「無意味な反復売買(コロガシ)」、 4)「操られる顧客」の四つを挙げています。以下、紙幅の範囲で整理してその概要を紹介します。

1. 「向かい玉」について 
 「向かい玉」とは、事業者(商品取引員・政府が6年ごとに設立を許可した法人)が顧客の委託玉に対等させて顧客と反対の売り買いの玉(自己玉)を建てることをいいます。その役割は、事業者自身の相場に起因する倒産防止にあるといわれています。しかし、商品取引所との関係では両建(既存建玉に対応させて反対建玉を行うこと)状態になりますから、事業者は、顧客から預託された委託証拠以外に収入を市場から得ることがほぼできないことになります。このような仕組みのもとでは顧客の利益は事業者の損となりますから、事業者においては顧客にできるだけ利益が上がらないようにし向け、さらに進んで顧客に損が生じるように導き、委託証拠金名で預託された金員の返還をしないですまそう、との発想に至ることは当然ともいえます。


2. 利乗せ満玉について
 「利乗せ満玉」とは、取引によって発生した確定益金を計算上委託証拠金に振り替え、その増加した委託証拠金で建玉可能な限度いっぱいの取引を継続することをいいます。
 相場の予想は困難で、すべての取引において例外なく利益を上げ続けることが困難である以上、顧客に益金を返さず利乗せ満玉を継続しておれば、いずれ確実に顧客に損失を生じさせることができます。


3. 無意味な反復売買(コロガシ)について
 「無意味な反復売買」とは、事業者が委託手数料の取得を目的として顧客に不必要な取引を頻繁に行わせることをいいます。委託手数料が増大すれば、顧客に生じた利益(確定益金)を、委託手数料で吸収することが可能になります。実例としては、内容の説明は省略しますが「直し売買」、「途転」、「日計商い」、「両建」、「手数料不抜け売買」などがあります。
 そして、それが一定限度を超す場合、「客殺しの手法」が行使されていると推定することができます。


4. 操られる顧客
 商品先物取引の説明をうけても理解できない顧客、取引について事業者からいちいち事前の了承を求められたことがない顧客及び事前に連絡があった場合でも、手持ちの情報がないことから事業者に的確な指示ができない顧客などが該当します。
 以上、特殊専門的な内容を細かい説明抜きで概要を紹介しましたので理解しづらかったことと思います。しかし、商品先物取引というものが消費者にとっていかに理解が困難で危険な取引であるかを知ってもらいたくて、あえて掲載しました。

 ここで再度、冒頭の事例を読み返してください。どのような手法が用いられているかある程度想像することができます。

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