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相談事例集
 

相談事例69: 成年後見制度の活用


 母(74歳)は、展示会等で2社から次々に着物や宝石を購入し、クレジット契約の支払い残債が約1900万円あった。日常の生活費にもこと欠く状態になっており、母に尋ねても、契約金総額そのものを理解しておらず、契約書面類も散逸してよく分からない。専門医からはアルツハイマー病の診断がくだされた。

(40歳代 女性)


 相談者は、10年ほど前の脳疾患の後遺症で判断力に問題があることが判明しましたので、診断書を添えて、意思能力の不存在による契約の無効を、また、強引な販売方法などの問題もあり、特定商取引法に基づく法定書面不備による解除(展示会商法がアポイントメントセールスに該当すると判断)、消費者契約法の退去妨害による承諾の意思表示の取消し等を、書面で事業者及び信販会社に申し出るとともに(母と娘の連名)、成年後見制度の保佐開始の審判手続を家庭裁判所に請求しました。
 交渉を続けた結果、未使用の商品は返品し、支払い済みのクレジット代金は放棄し、残債は請求しないということで合意をみました。


 この相談のポイントは「意思能力(判断能力)」にあります。人が、契約社会で健全な社会生活を営むには、「意思能力」と「行為能力」の二つが必要です。
 意思能力というのは、「有効に意思表示をする能力」のことです。意思表示とは、例えば、「アンパンを買おう」と思い、「アンパンを買います」と言うことです。子供で言えば6〜7歳から意思能力が備わりだすとされ、この年齢未満の幼児やこれ以下の知能しかもたない知的障害者、あるいは泥酔者には意思能力がありません。意思能力を欠く人の行為は無効です。
 行為能力というのは、「単独で確定的に有効な意思表示をなし得る能力」のことです。未成年者でも簡単な契約については単独で締結することができ(民法5 条1項ただし書き)、両親といえどもこれを取り消すことはできません。しかし、この未成年者が一人でこっそり締結した携帯電話の契約は両親から取り消される可能性があります(民法5条2項)。この未成年者の場合、意思能力はありますが(意思能力がなければ理論上はアンパンすら有効に買えないことになります)、行為能力はありません。このような人を「制限行為能力者」といい(民法20条)、他に、家庭裁判所が関係者の請求に基づいて、精神上の障害の程度によって決める「成年被後見人」、「被保佐人」及び「被補助人」と呼ばれる人たちがいます(民法8条、12条、16条)。これら制限行為能力者は、契約社会で食い物にされることのないようその活動範囲に一定の制限が加えられ、代理権、同意権、取消権等により法的に保護されています(行為能力制度)。
 この相談者の母親の場合、その意思能力の水準は、被保佐人あるいは被補助人といった制限行為能力者のいずれかに相当する水準であったにもかかわらず、契約前に家庭裁判所にその請求をしていなかったために法令上の保護を受けることができず、被害が大きくなってしまいました。
 このような意思能力がらみのトラブルの場合、事業者は必ずといっていいほど「契約の時は何ら異常に気付きませんでした」と主張します。
 それは、消費者が慌てて診断書をそろえて反論するにしても、反論はすべて診断書作成日から遡及して行う形になるため、トラブル発覚前の契約について「意思能力の喪失に伴う契約無効」を強く主張できず、当然そのような状態の場合には書面類もまともに残っていないことを事業者は承知しているからです。
 それだけに、地域社会は、自分を守る力が衰えている高齢者を注意深く見守り続ける必要があります。
 65歳以上の高齢者の割合が14%を超える社会を高齢社会といいますが、日本は21%(長崎県は23%)で、現在、イタリアの20%を抜いて世界一となっています。
 現代社会は、年金とクレジットという仕掛けさえ利用できれば、高齢者を難なく高額被害に引きずり込むことができます。いつかやがては当面する意思能力の喪失時に備えて対策を立てておく必要があります。自分の親といえども安心できません。

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