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相談事例集
 

相談事例26: 借家の明渡し要求及び敷金の返還請求(2)


 3年前入居したアパートは、築20年だ。半年前大家からトイレを水洗にしたり、駐車場を造るため建て替えに半年かかるので立ち退いてほしいと言われた。新築のアパートは家賃が高くなるので出ようと思うが、その際、畳、襖の修理代金は敷金から差し引くと言われた。納得できないので敷金は3カ月分全額返して欲しい。

(50歳代 女性)


 この相談は、二つの問題点を検討する必要があります。一つは、この大家の解約の申し入れ・更新拒絶は正当かということであり、他の一つは、敷金が担保する借家人の債務とはどの範囲まで含むのかということです。
 前回8月分で前段については検討しましたので、後段について今回検討することとします。


 敷金は、家賃の不払いや建物破損等借家人の債務を担保する目的で契約時に預け入れる金銭ですが、退去時に債務が残っていなければ全額返還されます。ただ、破損した建物の原状回復費用という名目で敷金が返還されないことが多く、トラブルが多発しています。
 このように、借家契約の退去時の原状回復をめぐるトラブルが多いことから、建設省住宅局(現在の国土交通省住宅局)では「現状回復をめぐるガイドライン」(平成10年)を設定し、基準を示しています。
 それによれば、原状回復義務の基本的な考え方として、まず、建物の損耗を次のように三区分します。

1. 建物・設備等の自然劣化・損耗(経年変化 例えばクロスの日焼け)
2. 借主の通常使用により生じる損耗など(通常損耗 例えば畳の痛み)
3. 借り主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用による損耗等(背比べのため子供が柱につけた傷)

 そして、特に約束のない場合は、1、2 については、これらの経費はすでに家賃に含まれていると考えて借家人に請求できず、3 については借家人に原状回復義務があり、修補・修繕費用を負担する必要があるとしています。
 したがって、「次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのいわゆるリフォームは、 1、2 の損耗等の修繕であり、大家の負担すべき費用」ということになります。
 問題は、入居時にあらかじめ特約が交わされている場合です。大家と借家人とでは、その力関係は圧倒的に大家優位の場合が多く、借家契約締結の時点で、ほとんどの場合すでに特約が一方的に課されていることが多いということです。
 借家人は異議を述べたくても、「そんならあなたに借りていただかなくて結構です。」ということで契約締結を拒否されるおそれがあり、なかなか意見を言えません。
 契約締結時の力関係で、特約を受け入れなければ社会生活の基盤である住居を確保できないというのは借家人にとって酷ですから、このような特約は消費者契約法(平成12年法律第61号)10条に低触し無効と考えるべきものではないでしょうか。
 以上のことを総合しますと、大家は、明渡された家屋を取り壊すにもかかわらず、原則として自ら負担しなければならないはずのリフォーム費用を借家人に要求していることになり、この要求は不当だと考えられます。
 そうしますと、大家の立ち退き要求には、恣意的な姿勢が強く窺われますから、裁判で争った場合は、大家に不利な判断がくだされるのではないでしょうか。
 センターでは書面で返金を申し出るよう助言し、解決できない場合は、調停、又は、少額訴訟制度を利用するよう勧めました。

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